繰り込み理論は,場の量子論の摂動の紫外発散を解決し,量子電磁力学を成立させる

物理学の解説コラムの目次へ


量子電磁気学を考えるためには,「繰り込み理論」が非常に重要なキーポイントだ。

発散の問題を解決するためにどうしても必要な数学的なツール,それが繰り込み。

量子電磁気学に不可欠な「繰り込み」

解決というより,一つの数学的なアイデアに過ぎないのだけれども,
この繰り込み(Renormalization)次第で,量子電磁気学の成立がかかっている。

場の量子論を矛盾なく構成するためには,繰り込みが必要。

量子重力理論 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%8...

  • 相対性理論を摂動により単純に量子化すると, 二次のレベルで紫外発散が起きる。
  • そこで次に考え出された理論が超弦理論である。これは重力子が閉じたひもで記述される、という理論
  • またこの方法とは異なる角度として, ループ量子重力理論がある。ループ量子重力はその背後にペンローズのツイスター理論とスピンネットワークを含んでおり、この理論は超弦理論のみが量子重力理論の唯一の候補ではないことを物語っている。


Quantum gravity - Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Quantum_...

  • The main result of loop quantum gravity is the derivation of a granular structure of space at the Planck length. This is derived as follows.
    • In the case of electromagnetism, the quantum operator representing the energy of each frequency of the field has discrete spectrum. Therefore the energy of each frequency is quantized, and the quanta are the photons.
    • In the case of gravity, the operators representing the area and the volume of each surface or space region have discrete spectrum. Therefore area and volume of any portion of space are quantized, and the quanta are elementary quanta of space.
    • It follows that spacetime has an elementary quantum granular structure at the Planck scale, which cuts-off the ultraviolet infinities (紫外発散)of quantum field theory.

紫外発散とは?

紫外発散とは,波長が短い領域での無限大,
つまり小さなスケールで生じる破綻のこと。

逆は赤外発散で,スケールが大きい場合の矛盾のこと。

EMANの物理学・統計力学・レイリー・ジーンズの理論
http://homepage2.nifty.com/eman/stati...

  • 紫外線の方向へ進むにつれて無限大へと発散してしまうというこの問題は「紫外発散」と呼ばれることになった。  これでは全周波数に渡って積分したときに無限大になってしまい、 ステファン・ボルツマンの法則さえ説明できないことになる。


黒体放射とは一体何か? 1 溶鉱炉内の鉄の発光と温度 「熱放射」 - 量子力学と意識の変容(宇宙と人間の無限性について)
http://blog.goo.ne.jp/quantum-mechani...

  • レイリー・ジーンズの法則では、 高周波になるにつれて、分布が紫外線領域で無限大になってしまい エネルギー等配分の法則を適用すると、 全エネルギーも無限大になってしまう「紫外発散」を起こす


プランクの法則 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9...

  • 紫外発散とはポール・エーレンフェストによって与えられた用語であり、黒体放射に「古典統計力学のエネルギー等配分の法則」を適用すると、空洞の全エネルギーが無限大になってしまうという矛盾


Ultraviolet divergence - Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Ultravio...

  • In physics, an ultraviolet divergence is a situation in which an integral, for example a Feynman diagram, diverges because of contributions of objects with very high energy (approaching infinity), or, equivalently, because of physical phenomena at very short distances.


Infrared divergence - Wikipedia, the free encyclopedia
http://en.wikipedia.org/wiki/Infrared...

  • In physics, an infrared divergence or infrared catastrophe is a situation in which an integral, for example a Feynman diagram, diverges because of contributions of objects with very small energy approaching zero, or, equivalently, because of physical phenomena at very long distances.

繰り込みが紫外発散の解決にどう役立つか

場の量子論の紫外発散が,繰り込みによりどう数学的に解決されるかが,下記PDFの3.3節に書かれている。

構成的場の理論と繰り込み群
http://web.econ.keio.ac.jp/staff/hatt...

  • 3.3紫外発散


くりこみがどう役立つかの定性的な説明は,下記ページにある。

場の量子論の発散の困難の解消へ
http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/pa...

  • 量子電磁力学のこの部分はまったく満足のいくものです。・・・・しかしながら方程式の解を得ようとしますと、問題に ぶつかります。
  • シュレーディンガー方程式   i<h>∂ψ/∂t=Hψ から出発します。初めの状態を定義して、解を得ることを試みます。そうすると第一次補正項はうまくいくのですが、第二次補正項を求めよ うとしますと、値が無限大になってしまう積分に遭遇してしまいます。どのような初期状態をとってみても、解を求める途中で このような無限大になる積分がいつも出て来ます
  • 大変簡単な場合を考えてみましょう。つまり電子も陽電子も光子も、したがってどんな粒子もまったく存在しない状態から 出発するとしましょう。そして摂動法を用いますと、粒子がない状態から出発して、粒子が生成されることがわかります。ハミルトニアンが電子、陽電子、光子の同時発生を引き起こす項を含んでいるからです。これらの粒子は 運動量は保存するが、エネルギーは保存せずにすべて同時生成されます。その結果初期状態は, 何も粒子がない状態に止まっていないことになります。
  • 粒子は第一次近似(第一次摂動)で生成されるのです。そして第二次近似をしますと、無限大の量が現われます。
  • 自己力にもとづく電子の電磁質量meは無限大になってしまう。すなわち、相対論的理論においては、自己エネルギーの発散をまぬかれない。一方自己エネルギーを有限にしようとすれば、こんどは理論は相対論と矛盾してしまう。
  • 相対論的不変性とunitarityと積分を有限にするという3つの要求を満たすことができない


繰り込み - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B9%B...

  • くりこみとは、場の量子論で使われる、計算結果が無限大に発散してしまうのを防ぐ数学的な技法であり、同時に場の量子論が満たすべき最重要な原理のひとつでもある。
  • くりこみにより、場の量子論を電磁相互作用に適用した量子電磁力学は完成した。場の量子論にくりこみを用いる方法は、以後の量子色力学およびワインバーグ・サラム理論を構築する際の規範となる。


くりこみ理論
http://www-het.phys.sci.osaka-u.ac.jp...

  • 無限個の変数の中から自然を理解する上で本質的な変数だけを残し、興味のない変数を消去してしまう操作を「くりこみ」と呼びます。消去した自由度の効果が、残された理論のパラメーターに繰り込まれるからです。
  • 特に、ミクロ変数を消去する際に、マクロ理論の有限個のパラメーターだけに繰り込むことができる場合にくりこみ可能と呼びます。このように、くりこみ可能性が人間が自然を理解できることと密接に関わっているように思われます。


繰り込みとの出会い
http://kurikomi.yu.to/

  • 素過程に現れる電子の質量のことを、量子力学的な補正を受ける前の電子の質量という意味で、「裸の質量」と呼んでいます
  • 朝永さんらは裸の質量をマイナス無限大にしておけば、紫外発散で現れる無限大と相殺し、電子の実際の質量は有限の値をとると


アトムの物理ノート 電子の自己エネルギー 2 (繰り込み理論)
http://letsphysics.blog17.fc2.com/blo...

  • クーロンポテンシャルという服を脱がされた電子という意味で裸の電子と呼ぶ。クーロンポテンシャルがない場合にだって質量はあるだろう。そのときの質量は裸の質量と呼ばれる
  • 裸の質量は負になる。電子の質量を説明しようとしたら自己エネルギーから来る効果を差し引く負の項が必要になるというわけ

物理学の解説コラムの目次へ